Webサービスの炎上経験から考える誹謗中傷問題
僕は今までいろんなウェブサービスを作ってきましたが、過去に一つだけ瞬間的にかなり炎上したサービスがあります
そのサービスについてはあまり詳しくは書きませんが、ジャンル的にはユーザによる投稿型のサイトです
最近はSNSでの誹謗中傷が多く発生してるようですが、ウェブサービスが炎上するとどういう現象が起きるのか
最近の木村花さんの件を見ていて、誹謗中傷という現代の問題について考えてみました
炎上の原因
僕が作ったウェブサービスが炎上した原因、それは
やや強引な掲載活動でした
ちょっと濁して話すのでなんのことだかよくわからないと思いますが雰囲気だけでも掴み取っていただければと思います
ユーザ投稿型のサイトでは基本的に開発が完了した時点では投稿は0です
誰もユーザがいないので当然です
しかし誰も投稿されていないサービスだと1つ目の投稿のハードルが上がって誰も投稿してくれません
そこで初期データが重要になるわけですが、僕はやや強引な手法を使ってデータをアップしました
ただこの方法は他のサービスでは普通に取り入れてますし、僕自身のプロダクトもそのようにされたことがありました
今振り返るとそれが最大の原因だったわけですが、これにはターゲットとした市場やその人種にも問題がありました
とりあえず、原因についてはそこまで詳細には書きませんが、ちょっとしたミスから始まったってことを理解してもらえればと思います
炎上して何が起きたか
そのウェブサービスはツイッターと連携したサービスだったわけですが、僕の手法に腹を立てた人が、ダイレクトメッセージ上で会話のやり取りをキャプチャしてアップしました
特にアップされて困るような会話ではありませんが、それを見たフォロワーがヒートアップし炎上しました
以下、炎上した結果何が起きたのかをまとめました
「○ね犯罪者」などというDMが24時間届く
そのサービスのツイッターアカウントへ24時間ひっきりなしに、全く関係のない第三者から
「○ね、犯罪者」
「サービスを閉鎖しろ」
「通報しました」
などというメッセージが送りつけられてきました
ウェブサービスのお問い合わせフォームからも同様の誹謗中傷が24時間届く
同様にウェブサービスに設置してあったお問い合わせフォームからも同様のメッセージが24時間ひっきりなしに送りつけられてきました
ツイッターでは送り主のアカウントがわかりますが、お問い合わせフォームではデタラメな名前やメールアドレスを入力してヒットアンドアウェイ的に送られてきます
プライバシーポリシーや利用規約の粗探しが始まる
個人開発者ならわかると思いますが、プライバシーポリシーや利用規約は大体は他の運営サービスでも使いまわします
この炎上したサービスでも同様に使いまわしていたため、サービス内容とは若干異なる内容が表記されていました
その点を発見したユーザが、
「怪しい、詐欺サイトに違いない」
と騒ぎ始めました
さらには「ユーザ登録するとクレジットカード情報が抜かれる」
などという嘘を吹聴する人も出始めました
エンジニアたちがサービスの粗探し(セキュリティチェック)を始める
投げ銭サービスの○SUSHIの件とも似てますが、こういう現象が起こると騒動を嗅ぎつけたエンジニアたちがサービスの粗探しを始めます
SQLインジェクションやXSS攻撃などを果敢にトライして、なんとかしてサービスの脆弱性を見つけようとします
そして入力欄にスクリプトなどを埋め込んでキャプチャを取り、
「このサイト、セキュリティがザルすぎwww」
などというツイートをしてさらに炎上を煽ります
誹謗中傷してくるのは全く関係のない第三者
当事者に文句や批判をされるのはわかります
しかし、この手の問題は誹謗中傷してくるのは全く関係のない第三者であることです
ツイッターで状況をハタから見てた無関係のヒマ人が、面白がって次から次へと参加してくるわけです
もちろんそれについて異を唱える人たちもいましたが、こういう人たちの声はあまり拡散されません
むしろサービスを悪役に仕立て上げたい人たちの方が声が大きく、ツイッターでリツイートされていきました
ついに誹謗中傷する人を特定
ツイッターのDMで誹謗中傷を送りつけてくる人の中で、素性を特定できた人もいました
僕は普段から他人を誹謗中傷できる人って、一体どんな人でどんな顔をしてるのか個人的興味もありました
軽く調べた結果、たまたま本名と仕事、会社の判明した人がいました
その人は20代の男性で職業はエンジニア、スタートアップで働いてる青年でした
会社には写真も掲載されていて、実に気弱そうな青年でした
面と向かって他人を誹謗中傷できそうなタイプではありません
実生活でオラつける人は影から他人を誹謗中傷する必要はありません、面と向かって言うだけですから
そう言う意味では影から他人を攻撃しそうなタイプではありました
いずれにしろ、普段はそう言う気弱そうな人ほど他人を誹謗中傷するような人種なんだと感じました
この時の僕の心理状況
この時は朝起きてメールチェックをすると誹謗中傷のメールが大量に届く状況でした
いくら見ないようにしていても、ソフトやタブの切り替えの時にちらっと目に入ってしまうんです
メールソフトを開けば、○ね、○ね、○ね・・・
ツイッターにログインすればDMボックスで、○ね、○ね、○ね・・・
この時は正直、人が怖くなりました
やり方は確かに間違えていたかもしれませんが、サービス自体はその種の人たちのためにと思って作ったものでした
それが裏目に出てこういう結果になったのは非常に残念であり、辛い体験でした
最近ではSNSで矢面に立たされた人が誹謗中傷されるケースが多いようですが、そういう人たちの気持ちに立つとどうなるのかが本当によくわかりました
テラスハウスに出演していた木村花さんが自殺してしまったのもわからない話ではありません
多分、こういう経験のない人だったら、
「誹謗中傷されたぐらいで自殺までしなくても・・・」
と、思うかもしれません
しかし、そういう精神状態に追い込まれるんです
24時間に渡って朝から夜までズーーっと、入れ替わり立ち替わりで○ねなどと送られてくる日常を想像してみてください
朝起きてメールチェックするのも憂鬱になります
メールが着信した音を聞くと、心臓がドキっとするんです
パソコンを開く前に動機が早くなるのもわかりました
誹謗中傷してくるのは限られたごく一部の人たちなのかもしれませんが、まるで日本にいる人全員が自分のことを攻撃してくるような錯覚に陥るんです
これは経験してみたことのある人にしかわからないと思います
感覚的には小学生のいじめに似てる
この感覚は小学生のいじめに似てる気がします
小学生の頃に複数人にいじめられた経験のある人ならわかるかもしれません
人は正義の側に立つと枷が外れる
「正義の反対は悪じゃない、また別の正義だ」
などと言いますが、人は正義の側に立つと枷(カセ)が外れるんです
普段は「悪いことはやっちゃいけない」と思っていても、
自分が正義の側に立ったと思うと、他人を攻撃しても良いんだと勘違いします
その結果自分自身が犯罪行為をしていたとしても気にしません
自分は正義だからです
正義の味方は何をしても許されるのです
セキュリティの粗探しは犯罪行為
僕の例で言うと、騒動を見たエンジニアが自分の知識にあるハッキング手法を試してきました
いわゆるSQLインジェクションやXSSです
しかし、これ自体が実は犯罪行為です
悪気があるかどうかは別として、他人のサービスをクラックしようとしてるわけですから
しかし正義の側に立ったエンジニアは自分が行ってることを正当化しているので犯罪だとは思ってません
迷惑行為への対応は非常に難しい
これらの誹謗中傷による迷惑行為への対応は非常に難しいものです
多くのプロバイダーにはAbuse対応窓口があります
Abuse対応とは、迷惑行為を行ってるユーザに対して警告や退会処理などの対応を行ってくれる窓口です
しかし、これらの迷惑行為は基本的に複数回にわたって攻撃される必要があります
1回だけ誹謗中傷された程度では対応してくれないことがほとんどです
しかしこういった誹謗中傷の多くは一人1回程度、多人数によるヒットアンドアウェイです
誹謗中傷するユーザが利用してるプロバイダーもまちまちで、それぞれの連絡窓口も異なります
ウェブサイトのお問い合わせ窓口から送られてくるメールに対してIPアドレスなどを記録していたとしても、実質的にAbuse対応をプロバイダーに依頼するのは不可能です
ツイッターは非常に怖いツール
ツイッターのリツイート機能は凄まじい拡散力を持ちます
ゆえに非常に強力でもあり怖い機能でもあります
ツイッターで炎上すると、その情報が正しいか間違ってるかに関係なくものすごいスピードで拡散されていきます
IT開発者としてはこれをうまく利用すればサービスを急激に普及させることも可能なわけですが、そういったサービスは思惑に反してなかなか拡散されず、悪い情報ばかりがリツイートされる現状があります
今回のような件だと、
「○○は詐欺サイトだから使わない方が良い」
みたいなツイートが瞬く間にリツイートされて拡散していきました
このリツイートを見た多くの人は特に詳しく検証することもなく、
「へえー、そうなんだー」
と認識し、暇な正義マンが実際にサイトに押し寄せてはクラックしてみたり、誹謗中傷をしてみたりといった結果となっています
正直なところ、僕が誹謗中傷されたこととは別としてツイッターのリツイート機能は非常に危険な要素を含んでいるため廃止するべき機能だと考えていますがそれはまた別件で。
僕のとった対応
まず、ツイッターのDMを受け付けない設定に変更しました
次に、サービスのお問い合わせ窓口に警告文を表示することにしました
これにはかなり効果があり、劇的に誹謗中傷メールを少なくすることができました
また、Wayback Machineのようなアーカイブを行う魚拓サイトに削除依頼を出しました
今はそれからかなり月日がたち、だいぶ落ち着きました(当然サービスは閉鎖)
今あの頃のことを振り返ってみると本当にゾッとします
「所詮、人間の敵は人間だよ」
と言っていた碇ゲンドウの言葉が身にしみました
正義マンにとって理由はなんだっていい
それから、現代ではひまな正義マンがそこら中にたくさんいます
彼らにとって標的となる人や理由はなんだっていいんです
自分が正義の味方となって他人を攻撃することで、自分の空虚さを一時的に忘れることができて何かが満たされるのです
匿名なことをいいことに、遠い安全なところから他人を攻撃し、今日も地球の平和を守ったという気分に浸るのでしょう
しかし実際問題、他人を攻撃したところで得られるものは何もありません
むしろ他人を攻撃する人は必ずいつか自分も攻撃される運命にあります
僕の好きな言葉に「与えられたければ、まずは与えよ」と言う言葉があります
人は他人から与えられると、必ず返そうとします
だから他人に優しくできる人は、必ず他人からも優しくしてもらえます
たまに、
「周りの人がいい人ばかり」
「人に恵まれた」
と言う人がいますが、それはその人自身がいい人なんです
類は友を呼ぶと言いますが、いい人だからこそいい人が寄ってくるわけです
長く書きましたが、結局僕が何を言いたいのかと言うと、
他人に優しくできる人間になりましょう、と言うことです
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